自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉。ある日、ふとしたきっかけで1枚の写真に心惹かれた光莉は、その写真を撮った人物に自分のポートレイト写真を撮ってくれないかとメールで依頼。光莉の元に返ってきた返信は「人物の写真は撮った事がありません。あと僕は、耳が聴こえません。なので、喋ることもできません。うまくコミュニケーションが取れないと思います。それでもよければ」風景写真家である真斗からのメッセージ。真斗は失聴者だった。光莉と真斗、それぞれを取り巻く人間関係が少しずつ影響を与えあい、そして脆く崩れていく。自然の美しさと対比されるように描かれていく人間模様。『莉』は単独ではほとんど意味を持たない。他と結びつくことで初めて意味を持つ。
田中稔彦