『南瓜とマヨネーズ』は、90年代のストリート・ファッションを牽引した宝島社のファッション雑誌『CUTiE』から派生した『CUTiE Comic』で掲載され、以後男女世代問わず長く愛されてきた魚喃キリコの代表作。実写化にあたり『パビリオン山椒魚』や『乱暴と待機』で知られる冨永昌敬がメガホンを取り、「どうしようもないけど、いそうな人たち」を、20年後の2017年版『南瓜とマヨネーズ』として、オリジナル脚本で映画化させた。どこか憂いのある表情と独特のタッチで緩和されていた人物のキャラもやけにリアルなセリフも、生身の人間に投影されると、役者のキャラと混ざり合うことでよりストレートに伝わり、なんだかギクリとしてしまう。 監督いわく「自分が『南瓜とマヨネーズ』を映画化するのは、男たちが団子虫から“多少ましな虫“になるさまを描くこと」と比喩しているが、“だめな男”たちに振り回されているようで、実は振り回している“どうしようもない女”が、「自分が何をしているのかわからない」と葛藤する、痛くも愛おしい、他人事とは思えないストーリーの心髄が見事にグレードアップ。原作がサブカル全盛期といわれる90年代終盤に息を吹き込まれた本作は、人も景色もどこか当時の名残を感じさせ、哀愁を漂わせながらも、2017年を生きる私たちとリンクする。 この空気感を絶妙なトーンで切り取るのが、人気写真家・川島小鳥。そして、音楽監修・劇中歌制作には「相対性理論」のボーカルをはじめとする音楽活動以外に、多岐に渡る芸術活動で活躍するやくしまるえつこが担当している点も注目だ。