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【インタビュー】佐藤健×山田智和監督、作り上げたのは“いま”を映す恋愛映画

初対面から4年。脚本会議から参加し、共にクリエイティブを高めあってきた山田智和監督と佐藤健の“同世代対談”で、健全な創作環境づくりについて教えていただいた。

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佐藤健&山田智和監督/photo:You Ishii
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  • 山田智和監督/photo:You Ishii
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  • 山田智和監督/photo:You Ishii

「普遍的な恋愛」と「現代を映す」作品作り


――山田監督がおっしゃった「東宝恋愛映画へのリスペクト」は作品を拝見していても強く感じました。チームにおいて共通項として挙げた作品やイメージ等々、ございますか?

山田:まずはやはり「恋愛」でしょうか。いつの時代もみんな恋愛に悩むし、必死に正解を探すもので、共通した変わらない部分は絶対にあるはず。そこを外したくないという想いはこのテーマをやる以上不可欠でした。そのうえで、これまでの恋愛映画は社会を映さなさすぎる問題もあったような気がしています。普遍的な恋愛、そして原作が持つ時代へのまなざしの鋭さが上手く合わさって新しいものになったのではないかと思います。

10年前の社会と現在の社会は当然違っていて、恋愛をする人や結婚をする人も少なくなっているかと思います。それは別に悪いことではないし、新しい方向に社会が進むなかで、必然的に描くべきテーマやスポットライトを当てたい人間は連なっていくはず。たまたまコロナを挟みましたが、いまの社会の方がこの映画は説得力を持つような気がします。

――普遍性と現代性のハイブリッドですね。改めて、協働の手ごたえを教えて下さい。

佐藤:山田監督の話の中で出た「空気を撮りたい」は、僕たち俳優からすると「芝居をちゃんと見てくれる」という安心感でした。その空気感を作るためには、役同士のつながりがあればいい。変に「どう表現しよう」と余計なことを考える必要がなく、ただ芝居に集中できる環境でした。

山田:僕は映画というものが初めてで、今回「俳優部ってこんなに真摯に一つの作品に向き合ってくれるんだ」とすごく嬉しかったです。映画というのは共作で、それぞれの部署が一つのイメージを作るものですが、健くんは作品に入る前から本当に高い熱量で関わって下さいました。これを当たり前だと思ってはいけないと重々承知しているのですが――健くんは脚本会議に何回も参加してくれて演じる側の視点で指摘してくれたり、良いアイデアをくれてブラッシュアップしていけたんです。そういった過程を経験できたため全幅の信頼を置いていて、撮影もとにかくスムーズでした。

きっと、往々にしてクランクインしてから1週間くらい探る時間があると思うんです。でも今回はそういった「だんだんフィーリングが合ってきたね」ということが全くありませんでした。初日の撮影は藤代と春の大事なシーンで、鮮烈に描かなければならないなか周りのスタッフもびっくりするくらい円滑に進んで、僕自身も楽しい! という想いしかありませんでした。これは決して運や巡り合わせなどではなく、健くんがどこまでも真摯な姿勢で作品に臨んでくれたからこそです。主人公に背中を預けられることで、周りの人たちも話しやすくなるし僕も演出がしやすくなる。その軸があることで「じゃあ主人公にこれくらいぶつけてみよう」というアイデアが監督/共演者からもどんどん出てきますし、その結果が現場で生まれたアドリブだと感じます。

健くんの芝居はもちろん素晴らしいですが、そうした向き合い方にものすごく感銘を受けました。そういった意味で、健くんは一番フェアな人だと感じています。媚びを売ったり変に気を遣う必要もなく、芝居や画に対して自分の想いを伝えるだけでいい。本当に健康的な場を作って下さいました。

僕がまだ経験が浅く、“言葉”をうまく持っていないなかで抽象的なことを言ったとしても、健くんは「監督が伝えたいのは多分こういうことだと思うから、1回やってみる」と常にオープンでいてくれてとにかく助けられました。僕自身も物事をあまり決めつけたくないという側面があるなかで、一緒に探らせてもらえて楽しかったです。

――一例を挙げるなら、どういったアイデアをもたらされたのでしょう。

山田:僕がすごいアイデアだなと思ったのは、脚本上では「洗面台の前で、鏡に映った自分と向き合って泣く」という風に書かれていたシーンのことです。撮影現場に入った健くんが「自分よりも、2人の思い出が詰まったものを見る方が心が動く」と伝えてくれました。それが本作全体のキーになったグラスです。こういったことを現場に限らず、脚本会議でも共有してくれました。

頭の中では「こうやって動く」と考えていても、実際やってみると「やっぱりこっちがいいね」ということはありますが、本作はかなり大きなシーンでもそれが出来ました。健くんのアイデアには常に助けられていました。

――佐藤さんのそうしたアプローチについては、キャリアを重ねていくなかで変遷してきたものでしょうか。『グラスハート』(2025年Netflix配信予定)では共同プロデューサーも務められていますね。

佐藤:そうですね。10代のときはそういったものはなく、だんだん増えていきました。

ただ、俳優は誰しもやっていることではあります。特に主演ともなれば、台本に書いてあるものをただやっているだけの人はいません。セリフやチーム、作品をより良くしようと動くものですし、僕自身もそうしてきましたが、20代後半くらいからもう少し公式的に「プロデュース」という役割をもらって行動した方が健全と考えるようになりました。

俳優の力は、すごくちっぽけだと思います。だからこそ、もう少し早い段階から入っていきたいという想いはどんどん強くなっていきました。ただ、「作品を良くしたい」という本質自体は、これまでと何も変わりません。

《text:SYO/photo:You Ishii》

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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